美術家連盟新会員奨励展〔JAA New Members Exhibition〕
2007年より年1回、当連盟が運営する「美術家連盟画廊」にて、新しく入会された会員の中から、若い作家を中心にその作品を展示し、活動を広く社会に紹介することを目的として「美術家連盟新会員奨励展」を開催しています。

 以下は、2012年の出展作家・作品・展覧会の模様です。

美術家連盟新会員奨励展'12
展示風景〔展示監修:五十嵐芳三・上條陽子 両氏〕   
 
 
 
出展作家・出展作品
[全15名・氏名敬称略・部門別五十音順・略歴は2012年現在]
 

鳥垣 英子『金魚
728×910mm、岩絵の具、墨、和紙
鳥垣英子氏鳥垣 英子
[日本画部] Eiko TORIGAKI

 感情の動きや、いのちあるものが動いた軌跡や動く道すじに誘われるように形を描くとラインは饒舌を通り越して鬱陶しいほどになることもあれば、すがりつきたいほどシンプルになることもあります。形を表したり閉じこめたり隠したりしながら、常に感じるファンタジーを私の中でリアルにしていきます。描きたいのは今を生きる、いのちの時間です。
 「金魚」では、何層にもゆらぐように重なる時間幕のむこうにある、あたたかい微笑みに繋がる記憶をイメージして描きました。

1958年大阪生まれ。1979年〜現代童画会出品。現在、委員。2003年 現代童画大賞(都知事賞他)。2004年 新美術新聞「フェイス21世紀」。グループ展多数(国内・海外)個展多数(ARTdeART-VIEW,K'sGallery,artTruth他)。
 
 

伊勢 裕人『残響と足』1200×510mm、パネル、油彩
伊勢裕人氏伊勢 裕人
[洋画部] Hiroto ISE

『残像を追いかけて』

 「きたないけどきれいだ」 この言葉を私が大切にしているということだけは明確なんですが…あいもかわらず、迷ってジタバタして、いったりきたり…その解らなさ、曖昧さ、混沌とした頼りなさこそこの足の残像のような気がします。「本当のことを突き詰めたい思い」と「その残像」が交差することこそが、これまでも、そして これからも私のこころを掻き立てる重要な過程であるように思います。

2002年 多摩美術大学美術学部2部絵画学科卒業。2004年 VOCA展。2005年 シェル美術賞展。2007年 中之条ビエンナーレ。その他グループ展多数。2002年 個展 GALLERY.b.tokyo 以降毎年。
 
 

奥谷 太一『彼方
F30号、キャンバス、油彩
奥谷太一氏奥谷 太一
[洋画部] Taichi OKUTANI

 自分がサラリーマンとは違う道を進んでいるためか、他の世界を生きている人達が気になったりする。普段は現役で働く中年の人達などを描いているがもう少し上の年代を描いた。今の日本、昔では考えられないほど元気な年輩者が多く、また日本を支えているのではないだろうか。
 マスコミなどで今後の日本の先行きが不安と伝える中でも立ち止まらずに、若者である自分も含めそのような人達に負けないように歩んでいかなくてはならないかと思う。

1980年 神奈川県生まれ。2007年 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻(油画)修了。2008年 東京藝術大学 油画研究室 教育研究助手(〜’10)。2009年 第77回独立展 独立賞受賞。2010年 第78回独立展 会員推挙。2012年 第47回昭和会展 昭和会賞受賞。現在、独立美術協会会員。
 
 

河合 順子『ミナモ
S50号、キャンバス、油彩
河合順子氏河合 順子
[洋画部] Junko KAWAI

 8月初旬の不忍池の風景です。
 太陽の光を浴びて風に揺れる、花の咲く前の蓮の葉は、生命力に溢れていて、思わず見入ってしまいました。
 その時感じた蓮の葉の力強さや、それらの風景を包み込む空気感はとても清々しく、印象に残りました。

1973年愛知県生まれ。1992年 愛知県立旭丘高等学校卒業。1997年 生産工学部賞受賞(卒業制作買い上げ)。日本大学芸術学部美術学科卒業。1999年 生産工学部賞受賞(卒業制作買い上げ)。日本大学大学院芸術学研究科博士前期修了。2006年〜 土日会 出展、以後毎年。2007年〜 グループ展 駱駝の会 参加、以後毎年。
 
 

笹野 恵子『voyage
608×1500mm、キャンバス、アクリル
笹野 恵子
[洋画部] Keiko SASANO

 最近は、舟のシリーズを描いています。このシリーズでは、舟は人の代わりであり、そのバックに描かれるのは人生の様々な情景です。今回は、舞台のような情景に舟を描き、ささやかだが、輝き続けて毎日のステージを生きる人の情景を描きました。

2003年 愛知教育大学大学院美術科修了。2005年 第4回夢広場はるひ絵画ビエンナーレ入選(はるひ美術館/愛知)。第58回瀬戸市美術展優秀賞(瀬戸市美術館/愛知)。2007年 第60回瀬戸市美術展奨励賞(瀬戸市美術館/愛知)。2008年 ブラザー(brother)記念病院作品所蔵。2009年 Dアートフェスティバル2009ビエンナーレ(ダイテックサカエ/愛知)三重県立美術館学芸員 石坂勝基氏推薦。名古屋の美術これまでとこれから入選(名古屋市美術館/愛知)。
 
 

設楽 恵里『ほんとうの理由は新しい行動のはじまり
P50号、パネル、綿布、和紙、油彩、ペンキ、鉛筆、メディウム、金剛砂
設楽恵里氏設楽 恵里
[洋画部] Eri SHITARA

一歩を踏み出そうとする時
新しく何かを生み出そうとするとき
自己を窮地へ追い込み、創造力をもって
現在を壊すことです。
それは勇気を必要とするかもしれません。
しかし、そうすることで真実の自分を取り戻そうとしていけるのだと思っています。
そんな思いを抱きながら、この作品を描きました。

2002年 多摩美術大学卒業。2006年 シェル美術大賞展。2007年 設楽恵里展(Gallery b. TOKYO)、世紀のダヴィンチを探せ! 国際アートトリエンナーレ2007。2008年 設楽恵里版画展(gallery&cafe blaurot)。2009年 設楽恵里展(Gallery b. TOKYO)。2010年 設楽恵里展(Gallery b. TOKYO)、世紀のダヴィンチを探せ! 国際アートトリエンナーレ2010。2011年 設楽恵里展(Gallery b. TOKYO)、板室温泉大黒屋企画展 二人展。
 
 

永井 夏夕『遠くの景色
M50号、アクリル絵の具、岩絵の具
永井夏夕氏永井 夏夕
[洋画部] Kayu NAGAI

実際に旅行で訪れた様々な場所をもとに、
再構成し空想の風景を描いています。
変化していく物と変わらない事について
日々考え制作を続けています。

1978年神奈川県生まれ。2004年 東京藝術大学大学院美術研究科デザイン科描画装飾研究室修了。2007年 個展/アートフェア東京 Gallery HIRAWATA。Berlin Weiβensee Hoch Schule / 聴講生。2009年 個展/新生堂、グループ展/東京美術倶楽部、LOWER AKIHABARA。2011年 個展/そごう神戸店、グループ展/MITSUKOSHI×東京藝術大学夏の芸術祭。2012年 個展/西武池袋本店 グループ展/ギャラリーなつか「新生2012」VOL.2。
 
 

前橋 義浩『寄り添うもの
M20号、アクリル油彩
前橋義浩氏前橋 義浩
[洋画部] Yoshihiro MAEHASHI

 なんとなくですが、ある人物の面影を追って描いているうちにそれは、男となり女となり変わっていきました。そんなものたちが、僕に寄り添ってもらえればいいかなと、いつも思いながら描いています。

1970年生まれ。 鳴門教育大学大学院芸術系(美術)修了。2004年 美術文化展 佳作賞。2008年 美術文化展 新人努力賞。2010年 美術文化展 美術文化賞。2011年 損保ジャパン美術財団選抜奨励展出展。2012年 東京都美術館 ベストセレクション2012出展。
 
 

松田 ゆりか『ラショウモン』F20号、油彩
松田ゆりか氏松田 ゆりか
[洋画部] Yurika MATSUDA

苦しく蠢くものではなく、息をひそめ生きるものでもない。
色も匂いも音も一瞬潜む夜明けのそのとき
羽根を広げ飛び立つ素振りのカラスの眼に映る
非日常は?非現実は? どのように映っているのだろうか?と
明らかに私ではない眼を借りて、見果てぬ夢のように
消え入らない色の移ろいを描いてみたかった。

1980年横浜生まれ。東京女子大学 文理学部・史学科卒、学芸員資格取得。ソシエテ・ナショナル・デ・ボザール ソシエテール(正会員)。国際現代美術家協会 理事・審査員。神奈川県美術家協会 運営委員。
 
 

山下 淳『Page-73
F50号、キャンバス、アクリル
山下淳氏山下 淳
[洋画部] Jun YAMASHITA

 六年程前、下田へと旅をした。寝つかれない朝方、その海をスケッチした。なんとも静かであった。そこでは、何も起きていなかったし、その一瞬前であったのかも知れない。そうして、私の心に引っ掛るようになった。
 その海は、特異な事柄がどこにもなかった。そして、もしも、何かが起きたとしても、日常が特異を包み込んでくれる日がやって来るであろう。そう信じている。どこにいても、日常が日常として自立していて、そして、特異は特異でしかないと感じられる日が、再び来ることを望んでやまない。

昭和43年2月13日東京生まれ。平成4年 和光大学人文学部卒業。平成16年 世田谷区民絵画展佳作入賞。平成20年 春陽会初入選。以後、毎年入選。平成24年現在、春陽会会友。
 
 

亀山 知英『Une forme-M-2008-I
665×765mm、版画コラージュ
(版画紙の上に銅版、木版、コラグラフ等で刷った版画を張り込み)
亀山知英氏亀山 知英
[版画部] Tomohide KAMEYAMA

 今回の展示作品は幾何学的な形の組み合わせで何か他のものにも見える様な、平面立体の遊びを自作の版画をちぎり、張り込み(大和糊で貼って木版画用バレンで押さえつけます)ながらやったものです。使われている版画は1995年に渡仏してから始めた植物の連作の版を現在も刷続けている同時刷りのモノタイプ版画です。普段から新作制作の度に形や色を変え10年、15年も前の版のイメージが現在の作品にも内包されるような作品を作っています。

1962年群馬県生まれ。1988年創形美術学校研究科版画課程修了。1991年文化庁国内研修員。1995年から2年間Cit internationale des arts(パリ)にて研修。その後パリで制作を続けフランスを中心にヨーロッパ、アメリカで作品を発表。2010年に帰国。2011年浦和柳沢画廊、2012年銀座養清堂画廊にて企画個展。群馬県立館林美術館企画、館林ジャンクション現代美術展に招待出品。
 
 

日和佐 廣『ゴミ置場で』660×645mm、木版画
日和佐 廣氏日和佐 廣
[洋画部] Hiroshi HIWASA

 日々の生活の中で 見たもの 感じたもの のイメージをかたちにしている。
 自分、家族、ごく身近な人々をモチーフにして。
 これは「家庭のゴミ出し」の模様を絵にしてみた。
 子供の頃から人を描くのが好きだったが、今も変らない。
 「人間のかたち」への興味は尽きない。

1950年愛媛県生まれ。1973〜1978年 新宿美術研究所で学ぶ。1987・1989年 個展(あかね画廊)。1999〜2012年 汎美展。2003・2006年 新収蔵品展(佐久市立美術館)。2005・2011年 個展(東邦画廊)。
 
 

伊原 セイチ『きのむかうところ ─2万年の旅─
W790×L1850×H880mm、2万年前の地層から出た杉、鉄
伊原セイチ氏伊原 セイチ
[彫刻部] Seithi IHARA

 鬱病による感覚喪失を経験する。砂をかむような永遠の時間…。自分の存在感のあまりの稀薄さに長い間苦悩する。生きている実感がない…。ほんとこまった…。生まれたことを当たり前だと思っていました。
こんなことが、制作のテーマを生んだ。木は生きた分だけの大きさになる。長い年月を生きた巨木の存在感は、巨大ないのちの塊。そのありように、強い憧れを抱く…。生命の方向に向かうための巨大な乗り物を制作しています。生命の神秘をずっと感じていたい…。

1960年生まれ。大阪府出身。大阪芸術大学美術学科卒業。行動美術協会60回記念賞を受賞。現在、無所属。2003〜2007年 ギャラリー中井(京都)。2008年 ギャラリー唐橋(滋賀)。2011年 大阪府大阪カンヴァス事業選定制作 きのむかうところ 住之江公園設置。2012年 信楽ACT Note Gallery(枚方)。
 
 

隈部 直臣『
W250×D400×H670mm、乾漆
隈部直臣氏隈部 直臣
[彫刻部] Naoomi KUMABE

 乾漆彫刻を出品しています。
 乾漆技法は奈良時代から、平安時代初期ぐらいまで行われた技法です。漆を主に、麻布、木などを材料として彫刻に仕上げています。古式乾漆技法には、脱活乾漆と、木芯乾漆の大まかに二種類があります。自分の作品では脱活乾漆の技法を、今の時代の技術、材料を組み合わせたもので、昔の技法とは少し異なっています。
 漆のもつ華やかさや、静けさを感じられたら幸いです。

1965年熊本県生まれ。1988年 名古屋芸術大学彫刻科卒業。1991年 武蔵野美術大学大学院彫刻コース修了。現在、自由美術協会立体部会員(自由美術賞、佳作賞3回)、名古屋芸術大学非常勤講師。
 
 

米窪 洋介『うつりゆくもの ─命流─
W470×D280×H420mm、陶土
米窪洋介氏米窪 洋介
[彫刻部] Yosuke YONEKUBO

人工的につくられた形が、時間とともに自然の中へとけ込んでいく。
無機質なものが新たな命をやどし、次の時を待つ。
朽ちること、そして再生すること。

1981年長野県生まれ。2007年 東京造形大学美術学科彫刻専攻卒業。2009年 イタリア国立カラーラ美術学院留学。東京造形大学大学院美術研究領域修了。現在、岡崎女子短期大学助教。